飛騨の森を感じる木工時間

もとは酒蔵や木工アトリエとして栄えた築110年の古民家を改装したもの。大きな窓から自然光がいっぱいに差し込むエリアには、レーザーカッターやUVプリンター、3Dプリンターといった最新のデジタルマシンが置かれています。その向こうには、飛騨の食材を使ったフードやドリンクが味わえるカフェスペースが広がっていました。

そもそも「FabCafe」といえば、3DプリンターやレーザーカッターといったFabマシンが設置された、”ものづくり”を楽しめるカフェ。アメリカやフランス、香港など世界中にネットワークをもち、日本には東京、京都、名古屋、そしてこの飛騨の4カ所に拠点があります。
 
「『FabCafe Hida』は、飛騨の広葉樹を知り、気軽に木工体験を楽しんでもらいたいという想いからつくられました。そもそも飛騨市の森林率は93.5%と非常に高く、その約7割が広葉樹です。広葉樹は多様な樹種があり形や色もそれぞれユニークで面白いんですよ」と「FabCafe Hida」の堀之内里奈さん。

店内の敷地は広く、庭の向こうには本格的な加工マシンを備える工房があります。そのそばでひと際目を引くのが、さまざまなサイズや形の木！
 
「ブナやナラ、クリ、ケヤキ、サクラ、カバ、ホオノキ……。広葉樹は、形や色がそれぞれ違って、とても個性豊かです。それらをすべて1g1円で販売しています。最近はコブのあるもの等、ユニークな形のものも人気ですね」（堀之内さん）

毎月1回イベントを開催しており、その日に合わせて面白い種類が入荷することも。
 
「雪深い飛騨には雪の重みで曲がった木、いわゆる“曲がり木”が現れるのですが、こうしたものは加工が難しいことからほとんど使われませんでした。でも、昨年は、ある作家さんが木を3DスキャンやAR技術を駆使し、曲がった形を生かしながら組み合わせたオブジェを作られました。こんな使い方があったのかと驚きましたね！」（堀之内さん）
 
各界のアーティストやデザイナー、研究者たちとのコラボレーションを通して、これまでにない木々の使い方を見るのが楽しいという堀之内さん。

木工遊びを楽しんだあとは、おいしいものでほっと一息。見逃せないのが、飛騨の食材を使ったメニューの数々。とくにクロモジという香木を焙煎した「クロモジコーヒー」は、高貴な香りが特徴でイチオシのメニューなんだとか。
 
「最近、『クロモジ』を使ったオリジナルコーヒーがお目見えしました。これは、このカフェの運営元である『飛騨の森でクマは踊る』社が持っている野生の森で採れたクロモジなんですよ」と言いながら、スタッフの伊藤優子さんがじっくり淹れてくれました。