飛騨が誇る地酒を堪能!老舗蔵元2軒の酒蔵見学で魅力を再発見
2025/08/15

飛騨が誇る地酒を堪能!老舗蔵元2軒の酒蔵見学で魅力を再発見

清らかな水と冷涼な気候風土が揃う岐阜県では、古くから酒造りが行われてきました。特に飛騨は、寒い冬を乗り越えるために酒宴文化が発展してきたこともあり、お酒好きで舌の肥えた人が多い地域です。
飛騨古川には、そんな地元の人々に愛され続けてきた2軒の老舗蔵元があります。酒蔵見学に参加して、「飛騨の地酒」の魅力を探ってきました。

飛騨のお酒がおいしい理由

おいしい日本酒には、水、お米、気候の3つの要素が不可欠です。


飛騨市には、北アルプスと広葉樹の多い大地に育まれた伏流水が豊富にあります。この清らかな水は、酒造りに最適なだけでなく、飛騨で開発された酒造好適米「ひだほまれ」を生産する土壌にも恵みをもたらします。
そして酒造りに適した冷涼な気候の中、熟練の杜氏たちが真摯に酒造りに向き合う。こうして、奥深い味わいの飛騨の地酒が完成します。

 

また、飛騨にはお祝い事や人生の節目に地酒を贈るという風習があります。手土産やちょっとしたお礼にもお酒が用いられ、酒宴文化が盛んな地域です。
地元の人々が地酒を愛し、楽しむ文化が根付いているからこそ、「地元の人々に喜ばれる酒を造りたい」という酒蔵の情熱がより一層高まるのかもしれません。

渡辺酒造店の歴史

  • 国の登録有形文化財に指定
  • 重厚な梁が歴史を感じさせる
  • 6代目の嫁入り時に使われた籠
  • かつて火事に備え用意されていたバケツ
  • 店内のあちこちに古道具を展示

飛騨古川の観光スポット「瀬戸川と白壁土蔵街」。その白壁土蔵街の中でも最も大きく重厚な造りなのが「渡辺酒造店」です。
1904年(明治37年)の古川大火後に再建された建物は、国の登録有形文化財に指定されており、店内の至るところにかつて使用していた古道具が展示されています。

 

荒城屋と称して商いをしていた渡邉家が、酒造りを始めたのは1870年(明治3年)。5代目久右衛門章が、京都へ行った際に口にした酒の旨さが忘れられず、飛騨の地に酒蔵を構えたのが始まりです。
出来上がった酒は大好評となり、宴の席で唄われた祝唄「鶴亀」の一節「蓬莱(ほうらい)」を銘柄に決定。桃源郷を意味する縁起の良い言葉が、今でも渡辺酒造店を代表する銘柄となっています。

 

現在、社長を務めるのは9代目の渡邉久憲さん。「SAKE is Entertainment」をスローガンに掲げて、日本酒を世界に広めるべく新たなチャレンジを続けています。

多数のコンクールで受賞!世界が認める日本酒

  • 「蓬莱」をはじめとした豊富なラインナップ
  • 店頭でしか手に入らない限定酒も
  • 特約店のみ取り扱いが可能なWシリーズ
  • 「ひだほまれ」を中心に様々なお米を使用
  • 精米歩合の見本
  • 試飲コーナー
  • コインサーバーで気軽に試飲

渡辺酒造店の日本酒は、国内外のコンクールで評価されており、世界一の受賞数を誇っています。ANA国際線ファーストクラスに採用された「蓬莱 純米吟醸 家伝手造り」など、世界に認められた地酒が飛騨古川で造られているのです。

 

元々は、林業や木工業に従事する人が多い飛騨において、疲れた人が好む甘めのお酒を造っていた渡辺酒造店。今では、ふくよかなうま味のある「ひだほまれ」を中心に様々な酒米を使用し、家庭で日常的に飲めるまろやかな味わいのものから、精米歩合が高くフルーティーな高級酒まで、幅広いラインナップを揃えています。

 

2014年には、一般には流通させず特約店でのみ取り扱う「W(ダブリュー)シリーズ」をリリース。「W」の3つの意味は、「渡辺酒造店」「世界(World)」「笑い」で、スタイリッシュなネーミングとボトルデザインが、これまで日本酒への関心が低かった人々をも引き付けています。

 

また、一度は絶滅し2017年に復刻した希少な酒米「ひだみのり」を使って酒を醸しているのはここだけ。ひだみのりを使用したお酒は、玄米タンパク質含有率が低く、淡麗ですっきりとキレのある味に仕上がります。

酒蔵内をじっくり見学。参加者限定の地酒試飲も

  • 酒蔵見学スタート
  • 案内をしてくれた三好こころさん
  • 白衣とキャップ、マスクを付けて奥へ
  • 1回で最大3tの酒米を蒸す
  • 麹を製造する麹室
  • 酵母を育てて酒母を造る酒母室
  • 醪を発酵させるタンク
  • 年に数回だけ行う製法「槽場直詰め」
  • タンクには参加者のメッセージがびっしり
  • 最後は酒蔵見学者限定の蓬莱を試飲

いよいよ酒蔵見学へ。担当の三好こころさんが、約1時間にわたり丁寧に案内してくださいました。

 

軒先に吊るされた杉玉の意味、渡辺酒造店の歴史、ひだみのりの希少性、そして日本酒の造り方…まずは基礎知識から教えていただきます。


次は白衣に着替えて蔵の奥へ進み、実際に日本酒が造られている現場を回りながら、お酒の味わいや香りを左右する麹(こうじ)造り、酒母(しゅぼ)造り、醪(もろみ)造りについて説明していただきました。

 

この日は偶然にも、年に数回だけという「槽場直詰め(ふなばちょくづめ)」が行われていました。醪を搾った後、タンクへ移さずにそのまま瓶詰めするこの製法では、大量の氷で冷やされながらお酒が運ばれていきます。貴重な製造工程を間近で見られて幸運でした。

 

また、見学の途中にはクイズタイムも。


「酒蔵で厳禁な食材といえば納豆が有名ですが、他にもNGなものがあります。さて、何でしょう?」
正解は、冬によく食べる意外なものでした。答えが気になる方は、ぜひ酒蔵見学に参加して直接聞いてみてください。

 

最後に、参加者しか味わえない非売品の純米大吟醸を試飲。口に含んだ瞬間ふわっと甘み広がり、上品な香りが鼻を抜けていきます。酒造りへのこだわりを肌で感じた後にいただく地酒は格別でした。


旅の素敵な思い出に、飛騨の酒蔵の現場を体感してみてはいかがでしょうか。

 

※酒蔵見学は事前予約制です。詳細は公式サイトをご覧ください。

 

↓渡辺酒造店 酒蔵見学

https://www.sake-hourai.co.jp/inspection/kura-kengaku/kengaku/

蒲酒造場の歴史

  • 国の登録有形文化財に指定
  • 古川大火(明治37年)の後に再建された
  • 木材の不自然な切れ込みが歴史を語る
  • かつて帳場として使用されいた部屋
  • 光を取り込みやすい造り
  • 古川大火の時にも焼失せずに残った蔵

飛騨古川のもう一つの老舗酒蔵「蒲酒造場」。

こちらも国の登録有形文化財に指定されており、建物から伝統ある雰囲気を感じ取ることができます。

 


中に入って上を見上げると、木材の所々にある不自然な切れ込みに気付きます。古川大火後は新しい木材が足りず、近郊住宅から木材を譲り受けて建て直した形跡なのだとか。「一刻も早く酒造りを再開したい」、先人たちのそんな想いが伝わってくるようです。

 

蒲酒造場の創業は1704年(宝永元年)。初代の蒲登安が飛騨古川で商いを始めて地元の基盤と財を成し、それを元に酒造りを始めました。万葉集の和歌から名付けた代表銘柄「白真弓(しらまゆみ)」が誕生し、そこから300年以上にわたって家訓「利は貪るべからず頂くべし」を守り、地域密着の実直な酒造りを続けています。

 

現在の当主は、13代目の蒲 敦子さん。「もっとあなたのそばに白真弓」を理念にかかげ、飛騨古川の人々と歩んできた歴史を大切にしながら、新しい蒲酒造場を創ろうと努力されています。

郷土料理によく合う、飛騨らしい地酒

  • 「白真弓」「やんちゃ酒」など幅広い品ぞろえ
  • 季節ごとの限定品が並ぶ
  • 精米歩合の見本
  • 試飲コーナー
  • 吟醸酒・生酒・純米吟醸酒を飲み比べ

蒲酒造場の日本酒は、とことん飛騨らしさにこだわって造られています。酒造りに使用する酒米の半分以上は「ひだほまれ」。飛騨のお米と水を使い、飛騨ならではの寒冷な気候の元で、地元の蔵人が造る、まさに「地酒」と呼ぶにふさわしいお酒です。

 

代表銘柄「白真弓」はコクがありながらキレもあるのが特徴。お米のうま味と優しい甘み、そしてすっきりとした後味は、郷土料理との相性が抜群です。常温と熱燗で味わいが変化する「やんちゃ酒」は、全国燗酒コンテストお値打ちぬる燗部門で最高金賞を受賞。その他、日本酒スパークリングワインの先駆けとなった「Janpan(じゃんぱん)」や、濃厚なにごり酒、季節限定のお酒などを種類豊富に取り揃えています。

 

試飲コーナーでは、お店の方から直接お酒の説明を聞けるのが嬉しいポイント。この日は、夏におすすめの3種を一口ずついただきました。


夏限定の「飛騨の涼風」は、酒米に「美山錦」が使われており、暑い時でもすいすい飲める味わい。「白真弓かすみさけ」は、生酒らしい甘みと爽やかな酸味が口に広がります。「白真弓 夏吟」は、夏にぴったりのキレのある辛口。食事と一緒に楽しむのもおすすめです。

 

3種全てが異なる香りと風味をもち、日本酒の奥深さを改めて知ることができました。酒蔵のスタッフに声をかければ試飲ができますので、季節のおすすめを尋ねながらお好みの地酒を見つけてみてください。

繁忙期には見学できない蔵の中へ

  • 酒蔵見学スタート
  • 案内をしてくれた代表の蒲敦子さん
  • 酒瓶の入ったケースがずらり
  • 「Janpan」の瓶詰め。炭酸ガスを入れて仕上げる
  • 火入れ前の「Janpan」を特別に試飲
  • 奥の部屋にはタンクが並ぶ
  • 火入れを行う機械
  • 瓶口の包装も手作業で丁寧に
  • お酒の特徴を聞きながら試飲を楽しめる

蔵見学では、代表の蒲敦子さんが直々に案内してくださいました。

 

蒲酒造場の歴史やひだほまれの特徴、酒造りへのこだわりについて教えていただいてから、蔵の奥へ進みます。この日は「Janpan」の瓶詰め作業が行われており、ケースが大量に積まれていました。

 

発泡酒であるJanpanは、瓶に詰めてから炭酸ガスを注入、そして火入れという工程をたどります。流れるように進む作業に見とれていたら、なんと火入れ前のものを試飲できることに。まだ生酒のJanpanは完成品より甘みが強く、ここでしか飲めない特別感がありました。
瓶詰めから火入れ、そして包装に至るまで、ひとつひとつ丁寧に手作業で行われている様子を拝見し、普段当たり前のように飲んでいる地酒がまるで宝石のように輝いて見えました。

 

地域密着の蒲酒造場には、冬が近づき新酒が出来上がると、地元の人から「今年の酒はコクが強くてうまいな!」など感想が寄せられるそうです。地元の人々の声を拾いながら、飛騨の原材料を使って飛騨古川で造られている地酒。ぜひ現地へ足を運んで、飛騨を感じながらその味わいを堪能してください。

 

 

※酒蔵見学は事前予約制です。詳細は公式サイトをご覧ください。

 

↓蒲酒造場 酒蔵見学

https://www.yancha.com/news/details_no1672.html

地元の居酒屋で飛騨の地酒を満喫!

  • 郷土料理と日本酒は相性抜群
  • 漬物ステーキ
  • 豆腐ステーキ
  • 朴葉みそ

せっかく飛騨を訪れたなら、地元の居酒屋で郷土料理と地酒を楽しむのがおすすめ。かつて雪深い冬には陸の孤島となっていた飛騨地方では、保存食の文化が独自に発展し、今もその郷土料理が受け継がれています。

 

飛騨を代表する郷土料理といえば「漬物ステーキ」。冬に凍ってしまった漬物を温めて食べたことが始まりと言われており、漬物を鉄板で焼いて卵でとじた一品です。もう一つ有名な鉄板料理が「豆腐ステーキ」。どちらもご飯やお酒と相性抜群で、今では居酒屋の定番メニューとなっています。また、「朴葉みそ」も外せません。味噌にネギなどを入れて朴葉(ほうば)の上で焼く素朴な料理ですが、香ばしく焼けた味噌の香りが食欲をそそります。

 

濃い味付けの飛騨の郷土料理と、それに合うように造られた地酒との組み合わせは絶品。お店ごとに異なるこだわりの味をお楽しみください。

 

郷土料理が食べられるお店は、以下をご覧ください。

 

飛騨古川の居酒屋・料理屋

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