和ろうそくで日常に安らぎを
2022/10/19

和ろうそくで日常に安らぎを

飛騨古川に200年以上続く「三嶋和ろうそく店」さんにお話をお伺いしました。和ろうそくを使った自宅でのリラックス方法も併せてご提案します。

飛騨古川の三嶋和ろうそく

城下町として栄えた飛騨古川に江戸時代から200年以上続く和ろうそく屋。現在7代目の三嶋順二さん、息子さんの三嶋大介さんが和ろうそく店を営んでいます。

 

手作りの和ろうそく屋は全国に20数軒ほどありますが、すべてが手作りの工程を守り続けているのは、「三嶋和ろうそく店」のみです。

和ろうそくの原材料

和ろうそくは芯にロウを何層にも重ねて作られています。
芯は3種類の原料、和紙、燈芯(畳に使用するイグサの中心にあるもの。職人が1本1本手で抜き取るそう)、真綿で作られています。和紙の表面に燈芯をぐるぐると巻き付けて、燈芯がほどけてこないように、糸状にした真綿を巻いて留めています。

実際に手にもって見ると驚くほど軽く、中が空洞になっているので、風もないのに炎が上下に優しく揺れます。
この芯を作る職人は、奈良県と滋賀県にいらっしゃいます。

 

ロウの原料はハゼの木の実。ハゼの実を蒸して、機械で絞ったものがロウになります。
江戸時代の創業以来ずっと、芯は奈良県、滋賀県から、ロウは九州、四国地方から買いつけています。

 

この房を約300房集めて、やっとでこれだけのロウがとれます。

和ろうそくをつくる工程

1.和ろうそく作りは朝の4時から始まります。
まずは、鍋にロウを入れ火にかけて溶かし、温度を約90℃にします。木臼に前日までに薄く削ったロウと溶かしたロウを入れ、すりこぎで30分~40分ねばりが出るまで練ります。
 
2.竹串に芯を刺したものを30本~40本ほど持ち、練ったロウの中に入れて引き上げ、竹串に回転をあたえます。3分ほどで表面が固まり、1回で約1ミリ太くなります。これを何回も繰り返し太くします。

 

写真の10匁ろうそく(長さ約16センチ)の大きさにするまで、17、18回つけます。
 
3.次に下塗りという作業で、2で作ったろうそくの表面に手でロウを塗ります。手で塗ることでロウに空気が混ざり白い色になります。
 
4.そして上塗りの作業。もう一度手で塗ります。きめが細かくなりさらに白くなります。
 
5.最後に頭の先を切り、芯を出し、竹串を抜きます。
これで白いろうそくが出来上がります。
 
ここまでの作業で13、4時間かかります。昔からの伝統的な和ろうそくの5つの工程です。
10匁ろうそくで、1日に約130本出来上がり、大きくなるほどつくるのに時間がかかり本数も少なくなります。

赤いろうそくは、白いろうそくに赤い顔料を溶かしたロウをかけます。ロウをかけるとすぐに表面は固まり、出来上がりとなります。

―一番大事な工程はどこですか?

「一番私たちが気を遣う大事にしているところは、原型をつくるところ。これが基礎です。
みなさんのお仕事でもそうだと思いますが、基礎がしっかりしていないと、最後うまくいかなくなると思います。どんなことでもそう。基礎が大事です。
ろうそくは様々な大きさ、種類があり、また季節によってロウの付き具合が変わってくるので、体の中に入れ込むまでには10年ほどかかります。」

―実際に和ろうそくを使ってみてロウが垂れないのに驚きました。どうしてですか?

「実は西洋ロウソクでも和ろうそくでも、型にはめて作るとロウが垂れてくるんです。
私たちの和ろうそくは手作りで、型にはめて作らず手作業で一ミリずつバームクーヘンのように重ねて作るので垂れにくくなります。
また、和ろうそくの芯は、燃え尽きず灰になって残るので、燃えている間に割りばしでつまみとって下さい。そうすればきれいに使用することができますよ。」

―三嶋和ろうそく店のここが自慢だというところは?

「毎年1月15日に行われる三寺まいりには、3つのお寺(円光寺、真宗寺、本光寺)に奉納するために13キロ以上ある巨大な和ろうそくを作っています。息子と2人で2本つくるのに18~19時間かかります。
この大きさの和ろうそくを作るのは、日本全国の中でも、飛騨古川の三嶋和ろうそく屋だけなんです。ぜひ、みなさんにそのことを知ってもらいたいですね。」

巨大和ろうそくと三嶋順二さん

―和ろうそくはどういう時に使用しますか?

「白は普段用で、仏壇や神棚、お墓参りに使っていただけます。赤は法事や、正月三が日、赤ちゃんが生まれた時や結婚式、成人式、還暦などのお祝い事に仏壇で使えるんですよ。西洋ロウソクを家庭で使うようになってから、節目節目で赤いろうそくをつかうということがなくなってきています。和ろうそくを使う家庭は全国で2割くらいになりました。」
 
三嶋順二さんは、お父様に内緒で、和ろうそくが日本から消えていかないようにという思いから、「現代ろうそく」という赤と白の模様の入ったろうそくを作るようになりました。現在は4種類の模様のろうそくを販売しています。

 

「現代ろうそくを作りだしてから、だんだんと若い人が使ってくれるようになりました。リビングやお風呂で使用したりと、癒されたいという人が増えてきたんですね。
和ろうそくは人間の心を癒す力があるので、今の時代に役立ってくれていると思います。」
 
「こんな素晴らしいろうそくは和ろうそくしかないと私は思っています。すすが少ない、ロウが垂れない、風にも強い、炎がきれいで人間の心を癒してくれます。私は世界一のろうそくだと思っています。たくさんの人たちに和ろうそくの良さを知ってもらいたい。
三嶋和ろうそく屋のため、飛騨古川のためだけではありません。日本のために、和ろうそくを残していきたいと思っています。」

ろうそくの灯りで過ごす時間を作りませんか?

人にやすらぎを与えるといわれるろうそくの灯り。
夜に明るい部屋で過ごしていると、交感神経を刺激して質の良い睡眠ができないと言われています。和ろうそくを取り入れ優しい灯りで過ごす時間をつくってみてはいかがですか?

 

テレビを見ながらお茶を飲んだり、ストレッチしたり何気なく過ごしている時間を、和ろうそくを灯すことで、いつもとは異なる心地よい空間になりますよ。

 

お風呂のリラックスタイムにもオススメ。壁が濡れていると鏡のように炎を反射して、部屋とはまた違った柔らかな明るさに包まれます。
お湯に浸かってゆっくりと灯りを眺めてリラックスしましょう。ぼーっとするのもいいし、考えごとをするのもいいですね。とびっきりのアイディアが生まれるかもしれません。

 

夕ご飯の時間にろうそくの灯りは人の顔を照らしてくれるだけではなく、料理をおいしく見せてくれる効果もあります。
和ろうそくは風に強いという特徴があるので、屋外で使うのもオススメです。キャンプでバーベキューをした後のくつろぎタイムにいかがですか。
 
現代人は、ついついスマホを触ってしまいがちで、目を休めることが少なくなってきていると思います。そんな今だからこそ、和ろうそくを灯してみるのはいかがですか?少しの時間でも炎を見ていると優しい気持ちになれますよ。

 

 

ライター:観光案内所スタッフ 北平
観光案内所で働く2児のママです。Uターンで地元に戻ってきました。都会へ出たからこそ分かる飛騨市の魅力や、観光案内所スタッフだから知っている穴場スポットまでご紹介していきます。

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